会計

運転資金や納税資金など、つなぎの融資が必要な場面は企業経営にはつきものですが、金融機関などによる融資の審査で自社がどのような評価を受けているのか気になるところだとおもいます。

金融機関などは融資先への評価をどのようにおこなっているか、財務的な観点から主だったところをみてゆきます。

銀行や出資者があなたの事業を評価する尺度

 外部の利害関係者である銀行や出資者は、あなたの事業について経営者個人としての信用の積み重ねとは別に、客観的な数値をもって下記に掲げる項目により評価を下しています。

(1)利益獲得能力
(2)支払能力
(3)事業の成長性・将来性   etc.

銀行や出資者が気にする、企業の利益獲得能力とは

 銀行や出資者は日本においては特に、企業の利益(役員報酬を加味して毎期の収益力を見られています)の状況を気にしています。これらの外部利害関係者が企業の利益獲得能力を見る場合、よく使われる分析指標として下記のような比率が挙げられます。

(1)自己資本当期純利益率(%) = 当期純利益 ÷ 期中平均自己資本 × 100

(2)総資本経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 期中平均総資本 × 100

 *自己資本とは、貸借対照表の「純資産」を指します
 *総資本とは、貸借対照表の「負債+純資産」=「資産合計」を指します

(1)は、純資産(株主の出資など)に対する利益の獲得度合いを見るための指標で、この数値が高いほど出資が利益に結び付く度合いが高いと判断できます。

(2)は、投下資本がどれだけの利益を生み出しているかを見る指標で、この数値が高いほど収益性が高いとわかります。

銀行や出資者が注目する、企業の支払能力とは

 銀行の立場では貸したお金が返ってくるのか、出資者の立場では配当金の支払に問題がない安全な資金状況にある企業なのかどうかが注目すべきポイントであり、下記のような分析により判断しています。

(1)自己資本比率(%) = 自己資本(純資産) ÷ 総資本(総資産) × 100

(2)配当性向(%) = 配当金 ÷ 当期純利益 × 100

(3)流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

(1)の自己資本比率を見ることで企業の財務体質が把握可能となり、この数値が低く出る企業は借金体質と判断され、経営の健全性の評価が下がります。何より正味の(実質的に)純資産がプラス(マイナスは実質的債務超過で、融資審査では大変不利となります)となっていることが重要です。

(2)の配当性向は、企業の利益がどの程度出資者に還元されているかを知ることができる指標で、この数値が継続的に伸びている企業は、資金繰りに問題なく安全であると評価されます。

(3)の流動比率は、すぐに動かせる資金が短期返済額をどの程度上回っているかを見て、その企業の資金繰りが危険な状態に陥っていないかを判断する指標で、少なくとも100%上回るべきでありこの数値が高いほど、資金に余裕があることがわかります。

企業の成長性や将来性は、第三者からどう評価されているか

 銀行や出資者などの外部の利害関係者は、あなたの事業の成長性や将来性を下記のような指標を用いて評価をしています。

(1)総資本増減率(%) = (当期末総資本-前期末総資本) ÷ 前期末総資本 × 100

(2)売上高増減率(%) = (当期売上高-前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100

(1)の総資本増減率がプラスを継続している企業については、その事業規模を拡大させている成長企業と評価されます。

(2)の売上高増減率は、企業の利益の源泉となる売上高に着目して、その数値が継続して伸びている場合は、成長基調にある事業であると判断できます。

あとがき

 今回は、経営者ご本人による主観的な視点とは異なる、外部の利害関係者からその事業がどのように評価されるのか、概要として主だったものを解説させていただきました。

経営者による財務分析では、損益分岐点、資本回転率、付加価値などの生産性といった経営効率に焦点が当たりがちですが、普段より銀行や出資者などの第三者による視点を意識することで、よりいっそう経営の健全性を高めることにつながります。

税理士小林会計事務所では、税務顧問に付随して財務分析による企業体質の改善に取り組んでおりますので、是非とも弊事務所サービスをご利用ください。