会計

面倒で後回しになりがちなバックオフィス業務ですが、毎月の経理業務のスケジュールがわかっていれば、忙しい業務に優先順位をつけながら準備のための予定を組むことができます。

税理士事務所に会計を外注している場合も、資料の引渡し時期を勘案して前もって準備しておくことができます。

法人設立の前から年間のスケジュールを意識し決算月を決める

法人の設立後は役員報酬や給料の計算、社会保険の手続などをはじめ、様々な経理処理が必要となると同時に、営業上の繁忙期や法人の決算・法人税申告などの業務イベントが次々と到来します。

消費税法の免税期間など税法上の検討のみならず、資金繰りや業務量をコントロールする観点からも、法人設立にあたっては年間のスケジュールを勘案して、決算月を設定するようにしましょう。

なお、個人事業の事業年度は、毎年1月1日から12月31日までで決算月は12月に固定され、これに基づき所得税や消費税の申告・納税が必要となるところが法人と異なるところです。ただ、社会保険の取り扱いや従業員の源泉徴収・納付などの事務は、法人と同じタイミングで訪れますので、下記の法人の各月ごとの経理事務を参考にしてください。

各月ごとの税務・経理業務

 9月決算法人の場合、各月の業務スケジュールは概ね下記のとおりとなります。

1月

・源泉所得税納付
 → 1/20までに下半期(7~12月)分を納期特例により納付またはゼロ円申告
・償却資産税の申告
 → 1/1現在保有の設備(不動産、車を除く)などの資産を県税事務所へ申告
・第三期労働保険料納付 → 毎年7月に概算申告・第一期分納付
・法定調書合計表を税務署へ提出
・給与支払報告書を各市町村へ提出(翌年度の住民税が賦課決定される)
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

2月

・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

3月

・上半期決算処理
・役員報酬・給与の計算、支給
・社会保険料納付

4月

・介護・健保の料率改定を確認
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・入社手続き、社会保険料納付

5月

・住民税の通知 → 6月分報酬・給与から控除開始
・中間申告、納付 → 前年の法人税額20万円超、消費税額48万円超400万円以下の場合
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

6月

・賞与計算・支給 → 計算には源泉、雇用、健保、厚年の金額データが必要
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

7月

・源泉所得税の納付
 → 7/10までに上半期(1~6月)分を納期特例により納付またはゼロ円申告
・労働保険料の概算申告 → 申告と合わせて第一期分を納付
・社会保険料算定基礎届提出 → 7/10までに4~6月の給与額をもとに届出
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

8月

・納税資金準備、下期資金繰り状況の確認
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

9月

・決算月 → 会計帳簿閉鎖、会計書類作成の準備
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

10月

・社会保険料変更 → 7月に提出した算定基礎届出に基づく社会保険料の改定
・第二期労働保険料納付
・役員報酬・給与の計算、支給
・決算処理
・社会保険料納付

11月

・株主総会 → 決算承認、役員賞与にかかる事前確定届出給与を総会日から1月以内に提出
・消費税、法人税等の申告・納付
・年末調整の準備 → 資料、データを回収・整理
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

12月

・年末調整 → 還付額、不足額の計算および精算
・賞与支給
・役員報酬・給与の計算、支給
・月次決算処理
・社会保険料納付

資金繰りや業務量によっては決算月変更の検討も

 月ごとの会社から流出するキャッシュが偏っていたり、営業上の繫忙期あるいは売上計上時期の偏りが大きい場合は、決算月の変更をすることができますので検討をお勧めします。

決算月変更の手続き

 法人が決算月を変更する際には、会社法上・税務上以下の手続きが必要となります。

1. 株主総会において「事業年度の変更」を議案とする特別決議を行ない定款を変更する(登記は不要です)

2. 税務署、県税事務所、市区町村へ異動届出書を提出する

決算月を定める際の注意点

 法人が決算月を変更する際には、次のような観点を考慮して慎重に検討ください。

1. 会社からキャッシュが流出しやすい時期と納税時期が重ならないようにする

 賞与支給月(6月・12月)、源泉所得税納付月(納期特例により7/10・1/20)、労働保険料納付月(7月)などがあげられますが、業界特有の事情なども考えて分散するようお勧めします。

2. 業務繁忙月や売上計上が大きい月と決算月を離すようにする

 人手の問題と節税対策の時間的余裕を確保するため、只中や直後に決算月を設定すると身動きが取れなくなりがちですので、比較的時間の余裕がある時期に決算・申告時期が到来するように決めることをお勧めします。

あとがき

 法人を新たに設立する際、わりと安易に決算月を設定する例が多くみられます。単に設立月から一番遠くなる月や周りの会社の多くがその月にしているからという理由が挙げられます。

法人設立前の段階から、タックスプランニングや事業計画を意識した決算月の設定ができればよいのですが、いざ事業を開始してみて初めて分かることも多いのも事実です。

現在の状況が、資金繰りなどに大きく影響を与えることを憂慮されていたり、また現実にお悩みの場合には、ぜひ経営のことも理解してくれる税理士にご相談下さい(完)